古座川にて

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古座川、小川ルートを最上流の瑞庄から下り初めて、そこからすぐに始まる柿太郎の廻りを抜けるに、まるまる二時間を要した。

息つく間もなくやってくる、小さな瀬に、初心者の僕らはただただ、底を擦らないコースどりと、パドルの操作に夢中で、駆け足で過ぎ去ってしまった。

それでもふと見上げた時に、視界を覆う深い谷間や、澄んだ水を力強く泳ぐ魚の多さ、山桜の咲く山肌は美しく、最高の川旅だった。

エントリー地点を探す道中で、集落の人に声をかけた。
当たり前のように、川遊びか~?と言い、車の置き場まで快く教えてくれたのは、花の催し物の立看板を立てている優しそうなおじさんだった。

一目にアウトドア好きと分かる良く日に焼けたお父さんとロードバイクを楽しむ息子と、二人組の親子に出ていく前に声をかけられた。
水量が多く、川下りに絶好のコンディションで気になって仕方がなく声をかけたとか。本流と支流、どちらがオススメが聞くと、迷わず支流だと言い、旅への期待が膨らんだ。
神戸から、週末はこの地に通うこの親子は、この場所が好きすぎて、自転車に乗った中学生の少年は、この春からここの高校に通うらしい。

川旅を終えて、タクシーを呼ぼうにも電波がなく、ヒッチハイクを試みた。
五分と待たず止まってくれたかわいらしい奥さんは、自分の車が汚い汚いと恥ずかしそうに言うが、一晩、焚き火の煙に浴び、水に濡れたそれどころじゃなく汚い僕らを嫌な顔ひとつせず、自分の家を通り越してまで、エントリー地点へ送ってくださった。
道中、ここの川は綺麗ですねと言うと、私らが暮らし出した時はもっと綺麗だったんだけどね。と窓の外の護岸に目をやり、少し寂しそうに言った。

ここで出会った人達は川と生きているんだなぁと感じた。
足早に過ぎた、スリリングな急流や美しい景色よりも、人と川に思いが寄り添って暮らす古座川が大好きになった。