ソロキャンプの夜

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誰かを誘うのが、なんとなくめんどくさくて、ソロキャンプに行くことになった。

しかし、一人でキャンプの用意をするのもこれまためんどくさい。

めんどくさいづくしのまま、当日を迎え、本当は「夜明けとともに漕ぎだすぞ~」なんて意気込んではみたものの、朝9時、悠長に家でパジャマのままトーストをかじっていた。

「行かなきゃ後悔しそうだなぁ~」と、無理やりに家をでた。

キャンプの下準備に関して、妻の手際の良さは本当に感心する。

手早く何種類かの野菜を切って、ジップロックにいれて、

「コッヘルにでもぶちこんで鍋にしなさいよ」


キャンプ地に向かう道中、だんだんと気持ちが乗ってきた。

なんなら、もう少し早く出ればよかったとすら思うから都合が良い。

スーパーで水や食料を買い足して、今夜のメインはブロックのベーコンを焚き火で直火焼きしてかじることにした。これまた時間短縮メニューである。

15時すぎ、キャンプ地に着くと、11月の下旬とは思えないほど暖かい。

流木がふんだんにあるこの浜辺は薪には困らない。

薪を集めて設営が終わると、もう16時を回っていて、日暮れまでカヤックを出して釣りを楽しんだ。

カヤックを浮かべると、いつもより透明な海に驚いた。底の岩が鮮明に見え、小魚の群れが光る。

一年のうちで、そう何度もない、最高のコンディションの予感に、釣りそっちのけで明日の潜りが楽しみで仕方がなくなってきた。


心ここにあらずの釣りはベラを二匹釣り上げたところで、針が折れて終わりにした。

カサゴでも釣れれば塩焼きにして、焚き火料理に華を添えれたが仕方ない。

夜の帳に向けて、テント回りをもう少し使いやすくしていく。

 

大きな丸太の流木を2つ並べて、その上に網をおく、今夜のキッチンが完成した。

浜に転がっていた、漁連のプラスチックの箱をテーブルに、ヘリノックスの椅子を組み立てる。今夜のダイニングが完成した。

椅子から手の届く範囲に薪を積んで、手元にガスランタンをつける。今夜のリビングが完成した。

あるものをできるだけつかって、コンパクトに使い勝手良く。

キャンプサイトは質素につくるのが好きだ。道具の見本市みたいな仰々しいキャンプにはまったく興味が沸かない。

最小限にこそ、自然を近くに感じられそうな気がしてならない。お酒以外は。

黄昏時、早速、ビールの栓をあけて焚き付けから上がる炎を見つめた。

小さなコッヘルに白菜、鶏肉、豆腐を突っ込んで、塩味の鍋のもとで煮る。

出汁をすする頃には辺りは暗く、今日の焚き火も美しい。

孤独だった。

でも嫌ではなかった。魔が差して、暇そうなやつに電話して呼ぼうと思ったが、踏みとどまった。

心地よい孤独感を手放したくなかったのだと思う。

東の空から月が昇る。偶然にも満月で、焚き火に負けぬほど真っ赤に燃えている。

ゴロタ浜の、石のひとつひとつが影を落とすほど強い光が照らす。

月のでない夜の、のっぺりとした闇の世界ではなくて、立体的で美しい浜辺の様相だった。

寒くなれば火を大きくして、鍋の出汁を啜る。

腹が減ればベーコンを手掴みでかじってまた網の上におく。

いい感じの炎を維持して、いい感じに薪を塵にしていくのは立派な遊びだと思う。

少しパズル的な要素があってつい夢中になってしまう。

マドロミの中、ホダ火まで灰にするところまでこの焚き火遊びを楽しんで、寝袋に潜り込んだ。

23時、ずいぶん夢中になってしまった。