沢の奥で

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滝止まりの沢を抜けて、湖上に戻った僕らは、先ほど小さな景色とはうってかわった大きな空の下を漕ぐ。


右岸に目をやると、湖岸の道路に赤い橋がかかっていて、その橋を越えてすぐに、二股に流れの別れる支流があった。


右の支流は真っ直ぐ奥まで続く沢になっていて、左の沢は右巻きに大きくカーブして、先の見えない大変魅力的な沢だった。

 

僕らは左に進路をとり、蛇行する川路を遡上する。


川幅が2mほどに狭まったところの水際に、お地蔵さんサイズの観音様を見た。澄んだ川底には、人工物の後があって、ダム建造の時に沈んでしまった、なにかの跡地なのだろうか、と思いを巡らす。
すっかり木々の間が狭まって、日陰にちらつく日の光に、少しだけ厳かな気持ちになって、一礼して先に進んだ。

 

もうこれ以上漕げないという浅いところまで来ると、沢は2つに別れて澄んだ流れが合流している。山肌を背にして、流れが美しいこの場所がすっかり気に入って、今夜の泊まる場所を即座にここに決めたのであった。